ドローン空撮が身近になった一方で、映像に「映ってはいけないもの」が無意識に含まれてしまうリスクも急増しています。
特に注目すべきは、個人情報保護法やプライバシー権の観点から問題となるケースです。
「人の顔が映り込んでいた」「民家の敷地内まで撮っていた」「ナンバープレートが読めてしまう」——
こうした事例は、悪意がなくても法的トラブルに発展する可能性があります。
本記事では、空撮を行うすべての方が知っておくべき、プライバシー配慮と映像の扱いに関する基本ガイドをお届けします。
プライバシー権とは何か?|撮る自由と映されない権利
まず知っておきたいのが、「撮る側」の自由と、「映される側」の権利は常にバランスの上にあるということです。
- プライバシー権とは、**「みだりに私生活を公開されない権利」**を意味します。
- 住宅の敷地内や個人の顔、ナンバープレートなどはプライバシーに直結する情報であり、撮影・公開するには慎重な配慮が求められます。
特にドローンは高所から広範囲を撮影できるため、地上の撮影よりも意図せずプライバシー情報を収集してしまうリスクが高いのです。
映像に「映ってはいけないもの」が含まれてしまったら?
ドローン空撮でよくある「映ってはいけないもの」は以下のようなものです:
- 人物の顔・姿・服装・行動パターンが明確にわかる映像
- 住宅の敷地内・洗濯物・生活空間
- 車のナンバーや駐車位置
- 子どもの姿や学校関連の映像
- 特定の施設の出入り(病院・政治団体・宗教施設など)
対応方法:
- モザイク処理・ぼかし加工を施す(顔・ナンバー・建物)
- 撮影した段階で不適切と判断した映像は公開しない
- 意図的でなくても、本人から指摘を受けた場合は速やかに非公開対応を行う
誤って公開してしまった場合、プライバシーの侵害として損害賠償や削除請求の対象となることがあります。
SNS投稿・YouTube公開前のセルフチェックポイント
撮影自体には問題がなくても、「公開する段階での配慮」が不十分だったためにトラブルになるケースが増えています。
以下のチェックリストで、映像の公開前チェックを習慣づけましょう:
- 個人が特定できる顔・服装・動作が映っていないか
- 私有地(敷地・家屋・庭)が詳細に映り込んでいないか
- ナンバープレートや表札が読み取れないか
- 特定の施設の出入りが映っていないか(病院、宗教施設など)
- 子どもや学生の姿が含まれていないか(学校周辺を含む)
→ これらに該当する場合は、映像のカット・モザイク処理・音声ミュートなどで対応するのが基本です。
商用利用・依頼案件では「同意」が最優先
個人利用では多少のグレーゾーンが許容されることがありますが、**商用利用(広告・映像制作・企業案件など)**では話が変わってきます。
- 顔が映る被写体には、必ず肖像権同意書の取得を
- 私有地での空撮には、土地所有者の撮影許可が必須
- ドローンで撮影した素材を編集者・第三者へ渡す場合も、事前に利用範囲を明確にしておく
クライアントワークやメディア掲載を目的とした空撮では、事前の説明と書面による合意が最も安全です。
「撮らない・使わない」判断も立派なスキル
空撮の腕は、カメラ操作や構図だけでは測れません。
映すべきではないものをあえて「撮らない」「公開しない」判断ができることも、空撮スキルの一部です。
- 法律的にセーフでも、倫理的・社会的にアウトな映像は使わない
- 「誰かが傷つくかもしれない」と感じたら、それは配慮すべき合図
- 過剰な自粛ではなく、**“空撮者としての責任ある判断”**を
こうした視点を持つことで、あなたの映像は信頼され、安心して観てもらえる作品になります。
まとめ|「映す責任」と「使う責任」はセットで考える
空撮におけるプライバシー問題は、今後ますます注目されていきます。
「映像を撮る自由」は、責任を伴ってはじめて社会に受け入れられます。
撮影・編集・公開、それぞれの段階で「これは誰かに不利益を与えるかもしれない」と一度立ち止まることが、プロにも初心者にも共通して求められる意識です。
映像は記録であると同時に、“関係性”を映し出す鏡でもあります。
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Q&A(詳しい解説つき)
Q1. ドローンで撮影した映像に他人の顔が映ってしまった場合、公開しても問題ないですか?
問題になる可能性があります。他人の顔が明確に判別できる映像は、プライバシー権の侵害や肖像権の問題に発展するリスクがあります。たとえ公共の場であっても、特定の個人が認識できるような映像を許可なく公開するのは避けましょう。公開前にはモザイク処理を行うか、該当部分をカットするのが安全です。
Q2. 空撮に写ってはいけない「プライバシー対象」とは具体的に何を指しますか?
代表的なものは以下です。人物の顔や姿、個人の自宅敷地、洗濯物、車のナンバー、表札、特定の施設(病院・学校・宗教施設など)への出入りなどです。特に、映像を見る人が「場所や人物を特定できるかどうか」が重要な判断基準になります。無意識に映り込んでしまうこともあるため、編集段階で細かくチェックしましょう。
Q3. YouTubeにドローン映像をアップする際に、事前に確認すべきことはありますか?
あります。映像の内容に関して、以下の点をチェックしましょう。
- 顔が明確に映っている人物はいないか
- 個人宅の様子や敷地の奥まで撮影されていないか
- ナンバープレート、表札、学校名などが読み取れないか
- 映像内に音声や会話が含まれていて、個人情報が含まれていないか
- 公共性のある施設や人の出入りがセンシティブでないか(病院、宗教団体など)
いずれかに該当する場合は、ぼかしやカット処理を検討することが必要です。
Q4. 商用案件で撮影する際は、どのような手続きが必要になりますか?
商用利用の場合、撮影対象の人物や私有地については必ず事前に「書面での同意」が必要です。肖像権使用許可書、撮影許諾書、土地使用許可などをあらかじめ取得しておくと、トラブルを防ぐことができます。また、完成した映像の使用範囲(ウェブ公開、テレビ放送、広告利用など)も明確に示すことが望ましいです。依頼者がいる場合は、その範囲をクライアントと共有し、合意形成を図ることが信頼につながります。
Q5. 万が一、プライバシー侵害を指摘された場合、どう対処すれば良いですか?
速やかに公開停止・削除対応を行うことが第一です。意図しない映り込みであっても、当事者が不快や不安を感じた場合、そのまま放置するのはリスクになります。また、指摘内容に対して冷静に対応し、可能であれば非公開処理後にモザイクなどで修正した上で再公開する方法もあります。謝罪の言葉を添えて連絡を入れることで、トラブルの拡大を防ぐことができます。
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